めだかボックス② 第70箱 「好きだぜ」
ジャンププラスで絶賛無料公開中の本作品。
ジャンプで当時読んでいたはずなんですが、なんというか読めば読むほど面白い作品ですね。
一気読みで読むのと週間で読むのでも受けが全然違いますしね。
というわけで70箱のまとめ・感想。
最初は回想シーン、
中学時代に球磨川がとある女生徒(安心院さん)の顔をはがした大事件をおこし、ぶちぎれて乱心モードになっためだかちゃんが球磨川を制圧したところから。
「二度と人の心を傷つけない」
「二度ときみ達の前に姿を現さない」
「僕は反省したんだ」
「めだかちゃんだけは僕のことを信じてくれるよね」
「わかった 信じよう 許す」
歯を食いしばって言葉をひねり出しためだかちゃんに対して、
そっとほくそ笑む球磨川
そして話は今に戻り、
善吉が自分を奮い立たせようとします。
「俺の視力を「なかったことにした」だって?それがどうした馬鹿馬鹿しい!」
「大したスキルだが、今更驚きもしねえよ!」
「痛くもかゆくもねえよ!」
「むしろ目を瞑るまでもなくなって、ありがとうと礼を言いたいくらいだ!」
「さあ!続けるぞ球磨川!」「何なら俺はお前をなかったことにしてやるよ!!」
しかし言葉とは裏腹に、おびえ震える善吉。
対して球磨川
「そうだよ善吉ちゃん」「それが「見ない(プラス)」と「見えない(マイナス)」の違いだ」
と勝ち誇ったような表情。
自分の意志で「見ない」ことをプラス、自由を奪われ陥った「見えない」ことをマイナスといっているわけですね。
結果が一緒でも中身は大違いというわけです。
善吉は蹴りを繰り出すも、球磨川に躱されてしまいます。
「目を閉じた方が強くなると本気で信じていたのかな?」
「漫画じゃないんだから、見えた方が強いに決まってるだろ」
くじ姉はマイナス無効化システムを13まで用意していたようだが、基本戦略は自己暗示。
善吉が球磨川の恐怖を思い出してしまった以上、システムはマイナスにしか働かない。
絶体絶命の善吉。
そもそも「大嘘憑き(オールフィクション)」なんて聞いてなかった、とくじ姉がめだかちゃんを詰めます。
しかし、めだかちゃんも大嘘憑きなんて知らなかった。
中学時代の球磨川には、こんな物理法則を無視できるような最強能力は備わっていなかったようです。
(なかったことにできないのに、同級生の顔を剥ぐとか恐ろしすぎますね)
善吉ママももちろん知らなかった模様。
大嘘憑きは「この三年間で球磨川が新たに得た 否 新たに失った過負荷(マイナス)」
この言葉回しが西尾節ですね。大嘘憑きという最強能力は得たものでなく、失ったもの。なかったことにする能力ではなく、すべてを台無しにしてしまう欠点とみなしているわけですね。
依然苦戦を強いられる善吉にくじ姉が喝を入れます。
最近身につけたばかりの過負荷である以上、使い慣れてない、コントロールできない能力のはずだ!と。
しびれますね。
しかし、球磨川。確かに乱用はできない。
「だって油断すると世界そのものをなかったことにしちゃうからね」
さらっと恐ろしいことを言います。これも本当なのかどうかはわかりません。
「ただしまるっきりコントロールできない訳でもない」
「善吉ちゃんの視力をなかったことにした現実を、更になかったことにすることくらいはできる」
「あれ?反応したね」
「まさかとは思うけど戻してほしいの?」
「僕のこと眼中にないってあんなに格好良く言ってたのにおかしいな」
「仲直りして友達になってくれるなら、その目戻してあげてもいいよ」
「争う理由なんか何もないじゃないか」
「色々あったけど、きっととてもいい友達になれると思う」
球磨川先生の圧倒的揺さぶりラッシュです。
善吉の心も揺らぎます。
意外とそれも悪くないかな?なんて思いふけったりします。
今折れたところで、勝負は勝ってるんだし関係ない・・・
「球磨川、俺はお前が嫌いだ。だから友達にはなれない」
善吉は折れませんでした。
ここで屈したら、たくさんの心が球磨川に折られてしまう。それだけは阻止しなければいけない。
恐怖を感じながらも決意の表情に変わります。
「めだかちゃん!楽しい高校生活だったなあ」
今までのことを振り返ります。
生徒会選挙のこと。
目安箱を設置してからの激動の日々。
阿久根・喜界島が仲間になった時の思い出。
風紀委員会との抗争。
時計台地下の視察。
今となっては全部いい思い出だ。
対してめだかちゃん、
「何を言っている。やめろ。言うな。」
「そんな今わの際みたいなこと 言うな!」
「好きだぜ めだかちゃん」
見えないはずの善吉の攻撃が再び球磨川に当たり始めます。
「見えなくても戦えるよう頑張った。お前は俺の努力までなかったことにはできない!」
「とはいえまだビビってる、だから体の震えが止まらないならもっと激しく震えるまでだ!」
震脚をくりだし、リングを下までたたきつけます。
下には当然ハブが待ち構えています。
ハブに一瞬で巻き付かれる球磨川。
しかし、球磨川には大嘘憑きという欠点(マイナス)があります。
なかったことにしてまえば何の問題もない、と思ったその時善吉が球磨川の手を押さえつけます。
「その欠点なら俺がカバーしよう。」
マイナスの能力だからこそ、押さえつける・封じるのではなく「カバーする」
圧倒的な能力だと読者に印象付けておきながら、欠点であることを強調する西尾節です。
人の欠点を見かけて、封じてやろうなんて意地が悪すぎますよね。欠点を見かけたらカバーする、それがあるべき姿です。
「友達にはなれないけどせめて一緒に死んでやるよ」
「いやだ死にたくない、謝るから許して。僕が悪かった」
「お前の口からそんな言葉を聞くとはな」
「とてもじゃねえが 信じられねえよ」
二人して猛毒のハブ噛まれていくところで70箱は終わりです。
名言も多く、人気の高いお話です。
善吉の男が見れましたね。
ちゃんと告白するのは初めてじゃないですかね。
そして、一度は心を折られかけても、立ち直る強さ、こんな男がノーマルとは思えませんね。
アブノーマルよりマイナスより誰よりも人間臭い善吉だからこそ、人の心に胸打つんですかね。